電気自動車と電池は明日を拓く

電力そのものではなく、将来発電することのできる“能力”を取引する市場。

2013/03/05 ITenergy(アイテナジー)研究会

容量市場とは、供給量(キロワットアワー:kWh)ではなく、将来の供給力(キロワット:kW)を取引する市場である。系統運用者が、数年後の将来にわたる供給力を効率的に確保するために、発電所などの容量を金銭価値化し、多様な事業者に市場で取り引きさせる仕組みのことを指す。

現在、日本には容量市場はない。これまでは、一般電気事業者の独占を認める代わりに供給義務を課すことで、十分な予備力を確保できたからである。しかし状況は変わろうとしている。2013年2月8日、政府の電力システム改革専門委員会は容量市場の創設を提言した。今後、電力市場が全面自由化されると、現在の供給義務はいずれ廃止しなければならなくなる。すると、将来の予備力をどう確保するかが課題となる。容量市場が供給力確保の新たな手法になろうとしているのである。

電力自由化が進む海外では、容量市場が既に存在するところがある。かつて欧米では、kWhのみを取引する電力スポット市場や電力先渡市場があれば、発電所の建設コストも十分回収できると考えられてきた。供給が不足すればkWh価格が高騰するので、それで建設コストも回収できるはずだった。しかし、実際にはこれらのkWhオンリーの市場収入だけでは、需要ピークに対応する予備力用発電所などの建設コストや維持コストをまかなうには不十分で、これらを運営する事業者がいなくなってしまう懸念が出てきた。発電所の建設には時間がかかり、いくらkWh価格が高騰しても、そのあとで建設したのでは間に合わなかったのである。

そこで、市場参加者に対し、将来にわたって一定の予備力を確保する義務を課したうえで、その予備力を市場メカニズムによって調達する「容量市場」が考案された。規制メカニズムと市場メカニズムを掛け合わせたハイブリッド市場と言えよう。容量市場では、仮に1年間まったく発電しなくても、供給能力(容量)さえあれば対価が支払われるという点に特徴がある。

ここで、具体的な容量市場の取引の流れについて紹介しよう。日本の容量市場の設計はこれからなので、米国のISOであるPJMのものを紹介する。

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  • PJMは、小売事業者に対して、3年後時点で年間約16%の予備力確保義務を課す。小売事業者は、通常は自社発電所または相対契約で予備力を確保するが、不足分があれば容量市場から調達する
  • 容量市場には、現存する発電所だけではなく、建設予定の発電所容量や、デマンドレスポンスの削減容量も販売することができる
  • 価格はオークションで決まる。オークションは、受け渡しの3年前に開催される。PJMエリア内のすべての発電所は、このオークションに入札しなければならない
  • 既に自己供給または相対契約で売り先が決まっている発電所は「ゼロ円」で入札する決まりであり、精算(支払い)も行われない。売り先の決まっていない発電所は、建設コストの回収を見込んだ価格で入札する。最近、容量市場に占めるデマンドレスポンスの比率が高まり、ポジワットとネガワットで価格競争が出ている
  • 買い入札は、PJMが行う。理想的な新設発電所の建設コストをベースとした仮想需要曲線をPJMが作り、これと供給曲線の交点が市場価格になる。実需給の時期が近づくにつれ、需要量の予測値が変化するため、3年間のうちに追加オークションが3回程度行われ、量と価格が調整される
  • 精算は、3年後の実需給年に行われる。容量市場で約定した発電所やデマンドレスポンスは、電気やネガワットを発生させるかどうかに関わらず、年間を通じて容量収入を得る。さらに、実際に電気やネガワットを発生させて、電力スポット市場などにkWhを販売することも可能である。仮に発電所トラブルなどで約束の容量を用意できなかった場合は、ペナルティが課される
  • 容量市場の最終的な買い手は、予備力確保義務を課された小売事業者である。義務量に届かない分は、容量市場価格でPJMに支払う

スマートグリッドのキラーアプリケーションとされるデマンドレスポンスのアグリゲーターにとって、容量市場の登場は朗報となるはずである。容量市場がデマンドレスポンスの最大の収益源と考えられるからである。

日本の容量市場は、これから仕様の詳細や実現時期などが検討される。スマートグリッドの進化のためにも、その内容に注目したい。


西村陽(大阪大学)
大橋弘(東京大学)
小宮山涼一(東京大学)


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最終更新: 2018-01-07 (日) 22:15:02 (JST) (41d) by evinfo

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