電気自動車と電池は明日を拓く

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2020/11/21 3:33
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「輸入電気自動車はなぜチャデモ最大50kW対応が多いのか?」ジャガーのご担当者に質問してみ ...
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※冒頭写真は2019年の関西への長距離試乗取材時、偶然、納車されたばかりのアイペイスと出会った、おそらく日本初の「アイペイス同士で充電待ち」シーン。

実状に合わせて性能を手加減しているという現実

電気自動車として高い完成度を誇るジャガー『I-PACE(アイペイス)』は、90kWhという大容量電池を搭載しているのに、日本でのチャデモ規格の急速充電は最大50kWまでしか対応していません。昨年日本に導入されたメルセデス・ベンツ『EQC』や、9月にデビューしたばかりのアウディ『e-tron』も、大容量だけどチャデモ対応は50kWまで。さらには、グループPSAが続々と日本に導入しているプジョー『e-208』や『SUV e-2008』、『DS3クロスバックE-TENSE』もチャデモは最大50kW対応です。

独自に急速充電インフラを設置しているテスラやポルシェ(タイカン)は、100kW超の高出力な急速充電にも対応していますが、輸入電気自動車は「日本導入時のチャデモ対応は最大50kWまで」というのが大きな流れになっているのです。

大容量電池を搭載した電気自動車は満充電からの航続距離はもちろん長いのですが、急速充電を活用してさらに長距離を走ろうとする際には、急速充電器の出力が利便性に大きく関わります。最大50kW出力で30分充電しても、充電できる電力量はおおむね20kWh程度。電費が5km/kWhとすると、100km分しか入れることができず、結局、こまめに急速充電を繰り返しながら距離を伸ばすしかなくなります。

50kW器で30分充電後の表示。22%から47%へ。22.2kWhの充電量は、おおむね高速道路走行100km分程度となる。(2019年8月の長距離試乗にて)

なぜ、こんな状況になっているのか。ジャガー・ランドローバー・ジャパン(JLRJ)のご担当者にリモートでインタビューする機会を得て、直接、直球で質問してみました。以下、まずは一問一答形式でご紹介します。

【Q】アイペイスは欧米CCSではDC100kW対応という認識で間違いないでしょうか?

はい、間違いありません。

【Q】日本仕様でチャデモ規格、最大50kW対応を選択したのはなぜでしょう?

日本国内の急速充電器普及状況が、おおむね最大50kWとなっているためです。

【Q】日本でも高速道路などに高出力器の整備が進み始めています。今後、高出力対応とすることは計画されていますか?

将来的なことは申し上げられません。市場の動向や高出力器の整備状況を見ながら検討していきます。

【Q】広報車をお借りして長距離実走した際にも、使用できない急速充電器がありました。JLRJとしても状況は確認されていますか?

はい、認識しております。それらについては逐次調査し、改善に努めています。

新電元の中速器でエラー表示が出た様子。(2019年8月)

【Q】互換性チェックはどのように実施されていますか?

充電器メーカーとも連携しながら、実走調査を行っています。試験用車両の走行距離はすでに9000kmを超えており、国内に設置されている主要な機種は全て調査済みです。

【Q】どこか、1箇所で全機種のチェックをできるような施設はないのでしょうか?

そういう場所があるとありがたいのですが、ありません。実走調査を繰り返し、問題があれば個別に対応しています。

【Q】たとえば、2019年に長距離試乗した際には、日産ディーラーなどに多い細型タイプの急速充電器が使用できませんでした。設置数が多い機種なので、ユーザーが困るケースも多くなるように思います。

ご指摘の日産の機種については、最新のソフトウェアアップデートで対応し、すでに問題なく充電可能になっています。

【Q】そうした情報は、ユーザーにもきちんと伝わっているのでしょうか。

お住まいの地域によって普及している充電器が異なるケースが多いため、ディーラー経由でお客様の生活範囲を考慮してお伝えする形を取っています。

【Q】チャデモ規格に準拠しているのに、どうして使用できないといったような不具合が起こるのでしょう?

チャデモ規格はあくまでも急速充電の「仕様」を定めたもので、実装は各メーカーに委ねられています。よって実際の実装方法は各社で異なることから、結果的に充電器と車両間で期待値とは異なる挙動が生じることがあります。もちろん車両も充電器もチャデモ規格には準拠しており、どちらかがミスをしているということではないので、チャデモ協議会ともコミュニケーションを取りながら、問題に対応しながら前進しています。

充電インフラ整備とEV普及について

限られた時間ではありましたが、JLRJとしての充電インフラ整備や、電気自動車普及への思いについても質問しました。

高速道路SAPAでは充電待ちに遭遇することも増えています。

【Q】JLRJとして、テスラやポルシェのような経路充電インフラ整備は考えていらっしゃいますか?

すでに、チャデモ50kW器の販売店への導入を進めています。正規ディーラーの店舗CI(デザインルール)をリニュアールするタイミングで急速充電器の設置を進めており、11月13日現在、全国46店舗中の22店舗に設置済みです。

【Q】100kW超の高出力器の整備はいかがですか?

現状の課金方式が充電した電力量での従量課金ではなく充電時間による課金であるなど、現状では制度的な課題が壁になっていることは私どもだけではなく、業界全体が課題として認識しています。端的にいうと、高出力器を設置しても、設置者に経済的なメリットが少ないのが実情です。こうした状況は今後日本の充電インフラ整備を担う『e-Mobility Power』さんを筆頭に業界全体で解決すべき課題として認識していますので、制度改革を含めて日本の充電インフラのさらなる拡充に期待しています。

【Q】ジャガーとして、アイペイスに続く電気自動車は出てきますか?

はい。すでにジャガーのフラッグシップ・サルーン『XJ』の次期型モデルはBEVとなることを発表しています。日本導入時期は決まり次第発表させていただきます。

【Q】欧州では主要国もプラグイン車シェアが10%を超えてきました。一方、日本ではなかなか広がりません。日本市場でプラグイン車普及が進みにくい理由を、どのように捉えていらっしゃいますか?

欧州と比較すると、行政のサポートのレベルが違うと感じます。税制など金銭面のサポートに加えて、欧州の一部の国では優先駐車場やバスレーンの走行を許可して渋滞の影響を受けないなど、BEVやプラグイン車への優遇が手厚くなっています。現状はまだエンジン車との価格差(PHEVが割高)があります。日本でも金銭面に加えて、電気自動車の利用を促す施策がないと、なかなか普及は進みにくいのではないでしょうか。

ジャガー・ランドローバー・ジャパン株式会社マーケティング・広報部プロダクトスペシャリストの藤井崇史さんを中心に数名のご担当者からお話しを伺いました。

つまり、日本の充電インフラ「もっとがんばれ!」という結論

電動化や自社インフラにまで少し話題を広げましたが、この記事のテーマである「輸入車EVの多くがチャデモは最大50kW対応」であるのはなぜ? という疑問に対する結論は「日本の充電インフラが不十分だから」ということになります。

今、日本国内で運用されている急速充電器の多くは、2013年ごろからの数年間で、経産省とNCSの補助金を受けて設置されたものがほとんどです。7年間で電気自動車は大きく進化しましたが、急速充電器本体が更新されることは少なく、大容量化や高出力化に対応しきれていないということですね。

ちなみに、チャデモ規格自体は最大900kWのチャデモ3.0まで発行されています。

【関連記事】
チャデモの進化〜電気自動車次世代高出力充電規格は日中共同開発の『ChaoJi/チャオジ』へ(2020年5月16日)

では、どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。

端的に評価すると、欧州の「IONITY(アイオニティ)」やアメリカの「Electrify America」といった充電サービス大手に較べ、日本の充電サービスの根幹を担ってきた「日本充電サービス(NCS)」の仕組みや理念が、電気自動車の進化に追いつけていけなかった。また、日本国内の急速充電器メーカーが、EV大容量化や高出力化への対応に遅れをとった、ということになるでしょう。

さらに根本的な原因としては、国産自動車メーカーからリリースされる電気自動車の車種が少なく、日本国内で電気自動車普及が進んでいないことが、急速充電器メーカーの動きを鈍くさせてきたともいえます。

欧米、そして中国でモビリティ電動化の流れが本格化する中、肝心の日本国内がこのままでは、日本の自動車産業全体が窮地に追い込まれかねません。日本の充電インフラの未来、ひいては日本の国力の近未来は、NCSの事業を承継して急速充電インフラ整備を進めていく『e-Mobility Power』が、たとえば東京都が目標として掲げている「2030年に50%をZEVに」というレベルに見合った充電インフラ整備を実践することができるのかに掛かっているとも考えられます。

e-Mobility Power についてはいくつか気になる話題もあるので、追って取材を進めたいと思います。

(取材・文/寄本 好則)

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