電気自動車と電池は明日を拓く

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発行日時
2020/11/21 6:33
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[試乗記]トヨタ「MIRAI」新型12月発売 FCV普及へ デザイン一新
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 トヨタ自動車は12月、水素で走る燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」の新型を発売する。1回の水素補給で走れる距離を大幅に伸ばすとともに、「欲しいと思ってもらえるクルマ」を意識したスポーティーなデザインに一新した。FCV普及の起爆剤になるかが注目される。(佐野寛貴)

 FCVはタンク中の水素と空気中の酸素を化学反応させて走り、水だけを排出する「究極のエコカー」だ。初代ミライは、2014年に量産型FCVとして世界に先駆けて投入され、日本と米国を中心に累計で約1万1000台を販売した。

 新型発売を前に、プロトタイプ(試作車)の試乗会に参加した。プロトタイプといっても、市販車とほぼ変わらないという。

 外観を見て、すぐに「環境車」という先入観が打ち破られた。従来型よりも車高を引き下げ、スポーツカーのように疾走しそうな印象を与える。フロント部やボンネットが長く、乗車するデッキ部が短い「ロングノーズ・ショートデッキ」のデザインが目を引く。

 デザインを担当したトヨタMSカンパニーMSデザイン部の久保田憲氏は「街中で振り向いてもらえるようなスタイリングを目指した」と話す。高級感のある内装からも、普及に向けて勝負をかけようという意気込みが伝わる。

 ハンドルを握る。走行中の静かさは、FCVならではの魅力だ。ボタンを押せばエンジン車のような走行音がスピーカーから流れる機能もオプションで付けられ、車好きの遊び心をくすぐる。

 後輪駆動だけに、加速も滑らかで力強い。水素タンクの上にせり出すアームレスト(肘掛け)が腰回りを支えてくれるため、急なカーブでも体がブレない安定感があった。

 従来型からの性能向上も著しい。高圧水素タンクを増やし、燃料電池の容積当たりの出力を1・4倍に改善した。1回の水素補給で走れる距離は850キロ・メートルと、従来型から約30%も伸ばした。

 次世代車としての新しさも盛り込まれた。「マイナスエミッション」と呼ばれる機能では、車体の特殊フィルターが砂ぼこりやPM2・5、二酸化窒素などの汚染物質を除去する。走行していない状態で一般家庭が使用する電力を約4日分供給できる給電機能も搭載されており、災害時や屋外イベントで活用できる。

 次世代自動車振興センターによると、水素燃料を供給する水素ステーションは今年10月現在で全国で135か所で、「今年度内に160か所」とする国の計画通りに整備が進んでいる。

 ただ、国内大手が販売するFCVの乗用車はミライとホンダの「クラリティ」に限られ、19年に国内で販売されたFCV乗用車は690台にとどまる。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)に比べて普及ペースは鈍い。

 トヨタの豊田章男社長は「(FCVとステーションは)どっちが先かではなく、花とミツバチの関係だ」と話す。街中を走行するFCVが増えれば、ステーションの充実も期待できる。新型ミライはFCVの未来を左右するかもしれない。

 開発を担当したトヨタMSカンパニーの田中義和チーフエンジニア=写真=に話を聞いた。

 ――開発にあたって心がけたことは。
 「初代は燃料電池を作り、車として仕上げるのに精いっぱいで、車の魅力という点では弱かった。新型車は、見た目やハンドリング、走行の静粛性などで選ばれる車にしたかった。デザインもあえて『素で格好良いクルマ』を追求した」

 ――新型ミライへの期待は。
 「初代が出たことで『水素は危ない』という意識は薄まったが、まだ『なじみのない特殊な車』というイメージが支配的だと思う。新型車でその感覚を払拭ふっしょくしたい」

 ――FCVの未来について。
 「水素ステーションは数が少ないだけでなく、休日に利用できないケースがあるなど営業時間を含めて様々な制約があるのは事実だ。だが、車が売れれば、その利便性も向上していくはず。新型車でムーブメントを起こし、水素社会の『未来』につながる好循環を生み出したい」

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