電気自動車と電池は明日を拓く

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2019/11/9 1:03
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テスラ『モデル3』東京=淡路島ロングドライブでEV充電インフラについて考えてみた【復路編】
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往復約1200kmで充電回数は4回

まず、今回の往復で行った急速充電記録を表にまとめました。

TESLA MODEL3 東京〜鳴門往復充電記録

往復の約1200km走行のために行った急速充電は4回でした。このうち、淡路島到着時の「淡路ハイウェイオアシス」のみCHAdeMOの44kW器。あとの3回はすべてテスラスーパーチャージャーの120kW出力器です。

テスラのスーパーチャージャーは公称最高出力は120kWですが、ご存じのように急速充電時の出力は一定ではありません。電池残量が増えてくると出力は落ちていきます。従って、120kW器で30分充電したから60kWh、ではありません。

また、往路編でも説明したように、テスラのスーパーチャージャーは2台の充電器をペアにして145kW程度の電源を共有しています。今回、浜松でも鳴門でもペアリングされた充電器は使われていなかったので、充電開始当初は130kW以上の出力で充電することができました。

いずれにしても、往路復路ともに事実上の「経路充電(走行途中の継ぎ足し充電)」は1回だけ。電池残量は余裕でも、運転する人間のほうがもちません。今回、ライターの木野さんと二人で行ったので運転を交替できましたが、それでも往復それぞれ、充電以外に2回ほど休憩しました。

このモデル3のグレードは「パフォーマンス」で、搭載する電池容量は75kWhとされています。淡路島到着時が15%、鳴門到着時が13%で、30kWhリーフの感覚では「ギリギリ」ですが、13%でも残り電力量は約10kWh。5km/kWhとしても50kmほどは走れるのですからまったく不安はありません。

結論としては、テスラが独自に設置しているスーパーチャージャーの「ありがたさ」を実感できました。

今回の取材の目的地はこちら。電池研究の第一人者である雨堤さんを訪ねました。取材した記事は鋭意作成中です。

日本の充電インフラは「どうあるべき」なのか?

2013年にエンジン車からコンバートしたEVスーパーセブン(電池容量12.3kWh)で日本一周した時には、日本全国、どこに行っても急速充電器が整い始め、航続距離100kmほどのEVで、急速充電だけで日本を一周できることに感謝しました。

56日間で沖縄を除く全都道府県8160kmを走破。161カ所で急速充電しました。写真は十和田湖畔にて。

あれから6年、電気自動車の状況は大きく前進しています。当時、日産リーフはまだ24kWhモデルしかなく、最大出力50kWという規格のCHAdeMOで、何も問題はありませんでした。今では、日産リーフも40kWhと62kWh。テスラをはじめ、ジャガーやメルセデスベンツからも大容量電池搭載のEVが続々と登場しています。経産省が1005億円ともいわれる補助金を計上し、急速充電器の設置を進めたのは、まさに2013年のことでした。おかげで全国各地の高速道路SAPAにはかなり急速充電インフラの設置が整ってきています。

でも、75kWhの電池を積んだモデル3で、スーパーチャージャーを活用したロングドライブをしていると、今の日本の、電気自動車充電インフラの状況についていろいろと考えを巡らせずにはいられない気持ちになったのでした。

だらだらした愚痴になってもいけないので、ポイントを絞って整理してみます。

『モアナコースト』というリゾートホテル駐車場にある鳴門スーパーチャージャー。8台の充電器が並んでいます。

スーパージャージャーにはことさらの30分縛りはありません。ホテルのレストランでパスタランチを楽しみました。

高速道路SAPAへの複数台設置が必須

もうすぐ、軽自動車の新型EVも発売されるはず(日産&三菱さん、期待してます!)です。来年(2020年)には、ホンダeも国内デビュー。2022年にはフォルクスワーゲンのID.3も日本市場に投入されるはず。今、日本でいまひとつEV普及の勢いが遅い唯一最大の原因は「車種の選択肢が少なすぎる」ことです。車種が増えれば、EV普及は一気に進んでいくでしょう。

でも、日本の高速道路SAPAには、おおむね1台、多くても2台の急速充電器が設置されているだけ。現状でも休日の午後などには充電待ちが多発しています。長距離ドライブ中の「経路充電」が急速充電器の役割であり、その中心的なステージ=経路となるのが高速道路です。まずは全てのSAPAへの設置、さらに、SAには最低でも4台、できれば8〜10台の急速充電器の設置を進めていくのは、待ったなし、火急の課題であることは間違いありません。

一般道については、道の駅やコンビニ、日産や三菱をはじめとする自動車ディーラーなどの急速充電インフラがほぼ十分に整ってきています。今後数年、公的に整備を進めるべきなのは、高速道路網の急速充電インフラ強化です。

復路の浜松でもモデルXと重なりましたが、充電器は4台あるので問題なし!

高出力化は賢明に進めて欲しい

現状では大容量電池搭載EVの市場投入が目立ち、先行していることもあり、急速充電器の高出力化を求める声はこれからもますます多くなるでしょう。CHAdeMO協議会でも2017年には連続出力100kW,最大出力150-200kW(400A/ 500V)の充電を可能にする新たな高出力規格を策定。2018年には150kW器を想定して中国と共同開発することを発表しています。

関係者からは、150kWの高出力器は高速道路SAPAなどニーズが高い場所に、また1台の充電器で2台のEVが充電できる仕様を想定しているという話も聞きました。正しいビジョンだと思います。

充電器の出力を上げれば、どんなEVでも充電時間が短くなる、という単純な話ではありません。モデル3が130kWを超える出力でスムーズに充電できるのは、搭載している電池容量が多く、電池の性能が優れている上に、高度な温度管理システムを実装しているからこそ。たとえば、これから登場するであろう軽自動車EVに、はたして50kWhを超えるような大容量電池が必要か、また150kWなど高出力での急速充電が不可欠かと考えると、答えは「NO」でしょう。欧州のコンボ2が提言している350kWとなると、個人的には「誰がどんなEVでどんな時に必要なんだ?」とすら思います。

もちろん、大多数の市販EVが高出力に対応できるのであれば、高出力であるほうが1台1回当たりの充電時間が短くなるので混雑軽減には繫がります。でも、急速充電器の高出力化ばかりを偏って急ぐのは現実的ではないし、賢明な選択とは思えません。

出力を欲張るほどに、電力グリッドへの負担も大きくなります。デマンド料金が十把一絡げという日本の電気料金制度への疑問はさておいても、高出力ばかりを求めるのは正しくないのではないかと感じます。新東名を走りながら考えた結論は「新規格150kWは主要SAPAに絞ってコスト的に無理のない範囲で設置する」こと、また「公的QCの出力としては負担の公平性という点からも50kW、せいぜい現状で設置が始まっている90kWで十分」で、高出力化よりも複数台設置が優先課題ではないか、ということでした。

鳴門SCでの充電開始直後。131kW出ています。

鳴門から浜松へ向けて走行中のディスプレイ、残量予測の画面。思った(リーフなどでの実感)以上に正確でぶれないことに驚きました。

課金制度を再構築するべき

テスラスーパーチャージャーを使ってみて「いいな」と感じたのは、高出力だけではありません。スーパーチャージャーではNCSのように「カードをかざして認証」なんていう手間はかからない。圧倒的に簡単で便利ということです。充電口にプラグを挿せば、自動的に通信してその車体を確認し、登録してあるクレジットカードに課金されます。プラグを抜けば課金は終了。

充電が終わってもケーブルを繋いだままにしていると、超過時間に応じて料金が加算されます。いわば充電場所放置のペナルティ。とてもシンプルで合理的です。

そして何より、充電器そのものがかっこいい。

一方、日本のCHAdeMO急速充電器は、現在、その多くがNCS(日本充電サービス)のシステムに登録しており、「チャージスルゾウ」という愛称の会員カード、もしくは自動車メーカーなどの提携カードによる認証が必要です。カードや料金のシステムは、ここで簡単には説明できないくらい複雑怪奇。要するに、EVを購入するメーカーによってバラバラです。

充電カードが、各メーカーのユーザー囲い込み策になっている側面もあるのでしょう。とはいえ、欧州のIONITY(アイオニティ)にも複数の自動車メーカーが出資しています。私自身はまだ実際に使ったことがないので伝聞ですが、認証&課金のシステムは日本のようにややこしくはないそうだし。なぜ、日本ではこうなってしまったのか。ちょっと悲しい気持ちになります。

ビジター利用の説明などは充電器に掲示。ちょっと古い写真ですが、今も状況は同じ。スマホ片手に悪戦苦闘した末に、充電を諦めた人も知っています。

さらに、レンタカーやカーシェアリングでEVを借りるなどして、ビジター充電するのがややこしい。『ジャパンチャージネットワーク(JCN)』や株式会社エネゲートの『エコQ電』というシステムが提供されてはいるものの、登録方法がわかりにくくて認証が面倒。たとえば東名や中央といった基幹高速道路を走ろうとしても、ビジター用の認証方法はバラバラで、なかにはどちらのビジター用サービスでも利用できず、その場で掲示されているQRコードを読み込んで……といったわかりにくい手続きが必要な充電器が混在しています。

ビジター利用者の多くはEVや急速充電に不慣れであることを考えると、完全に「嫌がらせ」としか思えないレベルのサービスです。世の中では「MaaS(Mobility as a Service)」が注目されて、電気自動車はその旗印でもあるはずなのに、レンタカーやカーシェアのゲストが使いづらいのはまったく矛盾しています。

ハード的に可能かどうかは知りませんが、CHAdeMO急速充電器でも車両と充電器が通信しているのはテスラと同じ。車種を問わず、クレジットカードなどの登録方法もシンプルに統一して「挿せば認証」されるようになるのが理想です。もっともそうした場合には、ビジター利用者はその都度クルマが変わる可能性が高いので、個人や法人の使用者として登録し、使う度に利用するクルマを登録&解除するといったひと手間は必要になったりもするのでしょうが。

あ、そうか。クルマを借りるレンタカー会社などで精算できれば簡単ですね。今どき、貸し出したEVの充電状況をリアルタイムで把握するアプリ開発くらい、さほど難しいことではないでしょう。

マイテスラのアカウントページで確認できる今回の充電記録。なぜか日付が違ってるけど、わかりやすい!

少なくとも、ビジター利用者が困り果てることがないよう、せめて高速道路上に設置してある急速充電器くらいは、シンプルな認証方法で統一することが必要です。

今年8月には、NCSは解消されて10月1日に設立された「株式会社e-Mobility Power」に事業継承することが発表されました。認証や課金のシステムが大きく、スピーディに改革されていくことを期待しています。

目的地充電の設備を拡げることも大切

今回の淡路島取材では、宿泊するホテルに電気自動車用の充電設備がなかったので、淡路島到着時、ハイウェイオアシスで充電しました。もし、ホテルに充電設備があればこの急速充電は不要。条件によっては復路出発前の鳴門での充電も割愛して、往復ともに浜松スーパーチャージャーで1回ずつ、合計2回の急速充電で走破することができた可能性もあります。

普通充電設備がある宿泊施設などは増えてきていますし、一般的な普通充電器(出力3kW)よりも高出力のテスラデスティネーションチャージャー(出力はおおむね10〜16kW)を備えている施設も増えています。充電インフラというと急速充電器ばかりに注目してしまいがちですが、自動車はずっと走り続けているわけではありません。遊んだり眠ったりしている間に充電できる「目的地充電」の設備がさらに普及してくれれば、電気自動車でのロングドライブがますます楽になります。

そのためにも、事前の情報収集で「あ、ここには充電器ないな」というホテルやゴルフ場に行った際でも、フロントなどであえて「電気自動車の充電はできないですか?」と尋ねるようにしているのは、私の勝手な、ささやかな啓蒙活動のひとつです。w

またモデル3で、どこか遠くへ出かけたい!

以上、つらつら考えたことをまとめてみました。個人的見解なので、電気自動車ユーザーの方それぞれにさまざまなご意見があるでしょう。とはいえ、高速道路SAPAの急速充電器複数台設置、高出力器の整備方法、課金制度の3点が、日本の充電インフラ網が抱える大きな課題であり、これから日本での電気自動車普及のスピードを左右する大問題であることは間違いありません。

でも、テスラ車であれば、日本が抱える切ない問題はすっ飛ばし、スーパーチャージャーを使って快適なロングドライブが楽しめるという現実を体感できたのも、今回の大きな収穫ではありました。このモデル3はEVsmartを運営するアユダンテの社用車なのでそう度々お借りすることはできないですが、また機会があってクルマの空きとタイミングが合えば、モデル3で遠征取材に出かけてみたいと思います。

個人的に自分で所有するEVはそんなに大容量でなくてもいいとは思っています。でも……

大容量電池のEV(テスラ車)と高出力充電器(スーパーチャージャー)があれば、ロングドライブはとても楽ちん!

という当然すぎる事実を痛感する1200kmとなりました。

(寄本好則)


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