電気自動車と電池は明日を拓く

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発行日時
2019/11/22 7:07
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MaaSのマネタイズは多目的最適化問題の解決が鍵に
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テクノロジー&トレンド

MaaS×エネルギーが生み出す新たな世界 第4回 マネタイズの方向性

アーサー・ディ・リトル・ジャパン 鈴木 香菜

2019年11月22日

 MaaSとエネルギーとの交点拡大や具体的な各社取り組み、サービス化に向けて乗り越えるべき課題・ハードルについて紹介してきた。ただ、実際に事業者として気になるのは、“本事業は本当にもうかるものか、自社が参入する意味があるのか”という点であろう。EV×エネルギーの文脈でよく議論されるEV充電ステーション事業は、アセットヘビーなビジネスであり、ある程度の顧客密度が集まらない限りは収益性が上がりにくいという難しさを持つため、投資に対して消極的な意見を持つ企業も多い。第4回では、MaaS×エネルギーのマネタイズの方向性について考察する。
 

収益源の拡大と、投資の両面から検討

 
 今までモビリティーとエネルギーの連結点として語られていたのがV2Gであり、スタートアップやOEM、電力会社などを中心に技術開発や実証事業が行われてきた。EVの蓄電池を利用し調整力提供・系統安定化を達成する、もしくは非常時におけるエネルギー供給を提供するV2G/V2Hは、今後モビリティーの電動化が進む時代における新規事業機会として注目を集めている。一方で、そもそも充電ステーション事業はアセットヘビーなインフラ事業であり、ユーザー数が成長するまで赤字のまま持ちこたえる必要があるほか、需給調整/調整力に対し十分な供給力を持たない状況ではマネタイズは難しく、現時点においてV2G事業で黒字化を達成している事業者はグローバルでも存在しないと認識している。
 では、具体的にどのようなマネタイズの方向性があるのだろうか。一つは得られたデータを基に顧客/周辺ステークホルダーにとっての価値を創出することで、収益源を広げる方法である。
MaaS第4回
 例えば、車両稼働率向上のための充電案内サービスは今後ニーズが高まっていくだろう。特にUberやGrabなどのライドシェアプラットフォーマーは、ドライバー不足の中でいかに車両の稼働率を高めていくかを命題としており、どのタイミング・どの場所で充電するのが良いか案内してくれるサービスは、事業の競争力に関わる重要な機能となる。DiDiBPの連合や、Enel Xなどはこの方向性でフリートマネジメントサービスを提供している。
 他に有望なアプリケーションは、EV蓄電池の劣化予防サービスだ。E―モビリティーのコストの大半を占める蓄電池であるが、サイクル数が1000回~3000回程度と限られており、かつ充電放電のタイミング(蓄電池は過充電や過放電による劣化が激しい特性を持つ)が蓄電寿命に大きな影響を及ぼす。従って、蓄電池を劣化させないオペレーションはモビリティーオーナーにとって死活問題である。例えば、スワップ式蓄電池が搭載された充電ステーションを提供するGogoro(台湾)は、蓄電池の劣化を最小化するようなオペレーションを目指してデータ分析を行っている。
 収益源を広げるトップライン側の方向性のほか、周辺ステークホルダーからの投資を募るボトムライン側の施策も存在する。大気汚染防止や産業政策上、E―モビリティーを普及させたい政府・自治体や、インセンティブ規制の下でグリッドへの投資を抑制したい電力会社、顧客のトラフィック量を増やしたいコンビニ・小売りなど、周辺プレーヤーの思惑に目配せすると、共同出資が可能なプレーヤー候補が類推されるだろう。収益化までの道筋が遠い事業の特性を考慮し、周辺ステークホルダーからの投資を募る方向についても検討の余地がある。
 

渋滞緩和、蓄電池長寿命化、系統安定化・・・課題を解決し収益を上げるサービスとは?

 
 第1回から第4回にわたりMaaSとエネルギーの連結点でどのような世界が生み出されるのか議論してきた。様々なデータが可視化され連携する世界において重要なのは、どのようにこの“多目的最適化問題”を解いていくかであり、これが収益の源となる。社会視点では、渋滞緩和やアセット投資の削減、モビリティーオペレーター視点では、蓄電池長寿命化や車両稼働率の向上、エネルギーサービサー起点では、エネルギー使用量の削減や系統安定化への貢献など様々な思惑が存在する。これらには両方一緒に解決できるものもあれば、トレードオフの関係になっているものもあるだろう。自社の場合どのサービスから始めれば良いのか、もうかる事業とどう抱き合わせするのか、サービス拡張のために誰と組むべきかなど、企業の戦略変数は複雑性を増しているものの、社会はより便利で無駄がない方向へ進化している。モビリティーオペレーター、ハードウエアベンダーなど様々な事業者が狙うこの領域で、エネルギー事業者も自社の強みを理解した上で、事業展開を模索されたい。
【用語解説】
◆OEM
トヨタ、ホンダ、日産などの完成車メーカー。
◆DiDi
中国に本社を置く大手ライドシェア事業者、正式名称は滴滴出行。トヨタ、フォルクスワーゲンなどOEM各社とライドシェア用の電気自動車を共同開発するアライアンスを立ち上げている。
◆BP
英国のエネルギー関連事業を展開する多国籍企業。石油や天然ガスの採掘、輸送、精製、小売りを行う他、近年では新エネルギーへの投資を積極化。
◆サイクル数
蓄電池の充放電回数であり、蓄電池寿命の一つのバロメーター。
電気新聞2019年9月9日

(全4回)

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