電気自動車と電池は明日を拓く

東大の宮田秀明教授の研究プロジェクト。一般財団法人として「二次電池社会システム研究会」を設立し活動している。

  • 二次電池社会システム研究会

    一般社団法人「二次電池社会システム研究会」を設立することとしました。従来からリチウムイオン電池電気自動車(EV)の研究開発は民間企業各社において精力的に進められてきましたし、最近10年間のこの分野の技術の進歩には目覚ましいものがあります。さらに、私たちが「二次電池による社会システム・イノベーション」フォーラムを開催しました2008年春以降、二次電池電気自動車に限らず、環境問題を産業創成のテーマとして本格的に取り組む動きは急速に進展しました。今年2009年に誕生した民主党政権は1995年比25%のCO2削減を2020年までに実現することを公言しました。環境問題を解決するためには、エネルギー安全の向上と、環境産業の創成が並行して進められることが大切です。ENVIRONMENT,ENERGY  SAFETY、ECONOMYが並行して進歩し、一種のWIN-WIN関係を作らなければ成功しないでしょう。補充金政策にはおのずから限界があります。この壮大なプロジェクトを成功させるためには、環境機器を社会に普及させ、更に進んだ技術開発を行うだけではなく、それらを社会システムの中にどのように組み込むかという視点やこれらを組み込んだ社会システムの設計が重要と考えられます。こうすることによって、優れた環境機器の価値は二倍になるでしょう。社会システムにイノベーションを興すことが不可欠なのです。産業を振興するためには、単に環境機器の開発を進め、改良革新を進めるだけでは不十分です。DRAMや薄型テレビのようにコモディティー化して、ものづくりの消耗戦に追いこまれ、米国やEUや中国、インドに先行されるようにならないための戦略性が必要でしょう。私たちは、多くの環境機器のうち二次電池に注目しています。二次電池が「電気は貯められる」というパラダイムシフトを起こしつつあります。特にリチウムイオン電池の可能性が急速に高まっています。高密度化と低価格化が急速に進んでいます。これを生かすためには社会システムにどのように組み込むかということが極めて重要になるでしょう。 リチウムイオン電池のエネルギー集積度は化石燃料の1/50程度ですから、EV単体の性能は内燃機関を使う自動車にまだ見劣りするものです。製品単体としての競争力は高くないことになります。しかし、社会システム的に考えると、発電所の発電効率が50%に達し、乗用車の熱効率は15%程度ですから、EV が普及すれば、交通輸送部門の化石燃料の使用量とCO₂排出量は約1/3になることになります。EVは社会システムの要素として考えれば大変優れたものと言うことができます。もし大型オフィスビルやマンションやショッピングセンターにリチウムイオン電池が設置されたなら、安価な夜間電力を使って蓄電し、電力会社との契約電力量と電気使用料の両方を下げることが可能になります。このような取り組みが広まれば、昼夜電力の平滑化が進み、電力会社の設備投資を減らすことになるでしょう。 この他にもたくさんのビジネスモデルが考えられるでしょう。太陽や風などの自然エネルギー利用も二次電池と併用すれば格段に効果が高くなります。電池と EVを軸として新しい社会システムを設計し、ビジネス・イノベーションまたはシステム・イノベーションを引き起こしていくことができると思います。環境とエネルギーの問題を解決する最も有力な手段でしょう。二次電池による産業革命と言うこともあながち大袈裟ではないかもしれません。日本や日本企業を電池や EVの単なる製造供給国(企業)に終わらせない為「社会システム・イノベーション」のための研究開発が必要です。 そのためには多くの業種、業態が集まり、共同して新しいシステムやビジネスを創造していくことが重要と思われます。東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻はDepartment of Systems Innovationと呼びます。10年前に開始された、世界的にも珍しい専攻(学科)ですが、このようなテーマに取り組むべく設置された研究・教育ユニットです。 システム創成学専攻とその関連グループでは、従来からもこのような研究を行ってきましたが、今回この研究グループまたは東京大学そのものを「二次電池による社会システム・イノベーション」のプラットフォームとして使って頂き、新しい形の産学協同の技術開発、ビジネスモデル開発、社会システム設計を推進していきたいと思います。 研究会は、オープンフォーラムと分科会と研究プロジェクトを主な活動として実施していきますが、前二者はオープンなもの、研究プロジェクトはクローズなものです。両方を同時に進めていくことが大切と考えています。日本を動かす有力企業の皆様が社会システム・イノベーションのビジョンと目標を共有し、環境エネルギー問題の大きな解決策を創り出しながら、日本の国際競争力を高めることができなければならないと思います。

  • 第5回 2010年 2月22日(月)(場所:東大山上会館)
  • 第6回 2010年 7月 6日(火)(場所:東大農学部弥生講堂)
  • 第7回 2010年11月10日(水)(場所:東大農学部弥生講堂)

発足時に予定されている研究テーマ anchor.png

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研究グループAの研究テーマ(発足時) anchor.png

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EVの適用車種拡大のための周辺技術とその経済性評価(高橋・鵜沢) anchor.png

EVの適用車種・用途は1回の充電による航続距離の短さから大きく制約されており、電池技術の大幅な進展が待たれているが、本研究では、太陽電池の搭載や車体軽量化による航続距離延長もしくは電池重量・コスト低減の可能性をWtW分析と経済的成立性の両面から検討する。

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GPSとの連携システム:プラグインHEVの社会受容性 / 急速充電システムの社会受容性 (堀江・田中) anchor.png

プラグインHEVは電池量を減らせるメリットがあるが、純EV走行の短さと、電池残量低下に伴う最大出力低下が、潜在的な課題である。 車両搭載のGPSと連携させ、これから遭遇するであろう高速道路、高低差等を予測し、発電機始動タイミングを制御することで、動力性能を保証すると共に、エネルギー効率を最大にする手法を創出する。EVにおいても、同様に急速充電スタンド位置情報と連携することで普及に供する。

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EV用電池のリサイクル性とその向上(堀江) anchor.png

EV用電池は一台あたりの搭載量が大きく、リサイクル技術は必須である。これは電池に用いられる資源の観点からも大切である。EV用電池のリサイクル成立性に関して、コスト・資源の点から検討を行う。またエコデザインの観点も取り入れ、再生可能な電池設計の検討を行う。

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研究グループBの研究テーマ(発足時) anchor.png

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電気自動車とエネルギーシステム(松橋・吉田) anchor.png

ライフサイクルのCO2排出量の観点からは内燃機関車の製造時に起因するCO2排出の割合は10~20%程度であるが、電気自動車ではその割合が高くなる。本研究において今後の蓄電技術の開発動向を評価する場合には、二次電池キャパシタの製造に起因するエネルギー消費量もあわせて考慮する必要がある。
電気自動車の評価においては単体のLCA評価のみならず、電力系統への影響を含めたエネルギーシステム全体からの視点が必要である。商用電源から充電する場合には、季節や時間帯によってCO2排出係数が異なる上、大規模な普及を想定する場合には電源構成への影響も考慮しなければならない。このように電気自動車の環境負荷は幅広い視点から検討する。

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電気自動車の社会的受容可能性(松橋、吉田) anchor.png

自動車の使用形態は、保有する車両のサイズ、1トリップあたりの走行距離、あるいは利用頻度といった点が、都市部と地方部によってさらには個人によって異なることを考慮し、電気自動車の普及による環境改善が特に効果的である車両サイズや地域などを探ることも求められる。電気自動車の導入効果を推定するにはまず現状の自動車交通のCO2排出構造を知る必要がある。乗用車の排出するCO2について、近年の地域別排出量の変化を、保有台数、走行距離、燃費効率の変化に要因分解した結果をみると、全体として、CO2排出増加の主要因は地方の普通乗用車であり、保有台数、走行距離ともに増加傾向にある。同時に軽乗用車もCO2増加に寄与しているが、保有増加を走行距離の減少で相殺している構造が見られる。ここでは後者に焦点を当て、世帯の複数台所有によって軽自動車の保有台数が増加していることと1トリップあたりの走行距離が減少していることに着目し、主に短距離トリップの代替需要としてのEVの受容可能性を検討する。

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液体燃料の供給制約と代替可能性(茂木) anchor.png

環境とともに,EV社会に移行する直接的な要因である石油の供給制約と,GTL,CTL,バイオ燃料などによる代替を考慮した,液体燃料のグローバルな供給シナリオを考える。

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消費者の選好を考慮したEVの将来市場予測(茂木・松橋・吉田) anchor.png

選好によって購入する自動車を決定する消費者と,その消費者の集団としての仮想的な市場モデルを構築し,様々なシナリオのもとでEVの将来市場のシミュレーションを行う。

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研究グループCの研究テーマ(発足時) anchor.png

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電池の閉フローシステム構築による資源確保・環境負荷低減の研究(堀江) anchor.png

電池をEVから切り離し、社会システムに取り込むことで、大型電池の生涯を通じた閉じたフローシステムを構築する。これは電池リサイクル/リユースあるいは長期資源確保の観点からも極めて有利と考えられる。この将来効果を定量的に研究する。

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電池の社会資本化に関する研究(堀江・田中・武市) anchor.png

次世代の2次エネルギーの供給源として電池は有望視されている。従来の低容量用途の電池に代わって高容量の電池には、環境負荷軽減等の多くの利点を有しているが、初期導入コストが著しく高いことが普及の妨げとなっている。そこで本研究では、社会資本としての電池、特に充電が可能な2次電池を対象として、早期普及を目指し、電池購買者のみが電池の初期コストを負担するのではなく、電池購入者は利用料を支払うことで初期費用を軽減できる社会システムの設計を行う。具体的には電池が有望と思われる適用分野と市場規模を推定し、二次利用を視野に入れて金融的な手法を取り込むことで電池を社会資本とし早期普及実現へ向けた研究を進める。

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カーボンオフセットによる電池普及効果の検討(堀江・武市・田中) anchor.png

EV普及の最大の課題はその電池の高いコストにある。電池が劣化しEV用途に使えなくなっても、例えばロードレベリング用途であればリユース可能で大きな残価を有するが、社会的システム構築貢献により期待される社会的な省エネ効果(CO2削減効果)を算出し、カーボンオフセットプレミアムを付加することで、電池コストの低減がどこまで可能かを探り、EV初期導入への影響度を明らかにする。

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電池ライフの評価手法の開発(堀江・田中・武市) anchor.png

電池が長寿命化するならば、EV利用の後も、一般利用に長期的に供し得ると考えられ、例えば電力平準化などのリユースを介して、大きな潜在的な価値を生じ、EV導入時の高コスト問題の解決策となる可能性がある。電池債権化に向けた一つの前提は、電池の経済的価値を常に正確に把握できることであって、①電池寿命予測と共に、②標準寿命計測法を確立し、③日々の電池状態収集システムの構築(インターネット、ワイヤレスシステム、フラッシュメモリ他)、④透明性の高い個々の電池データ保存/管理の確立が必須であり、基本的な概念設計を行う。

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宅配専用車のEV(電気自動車)化の仕様設計と影響評価(武市・堀江) anchor.png

宅配専用車は、限られた地域を走行するために一日当たりの走行距離を把握しやすく、比較的低速で走行するため一般乗用車ほどの高出力を必要としないこと、商業地や住宅地を走行するために有害物質を排出しないことが望まれること、夜間の走行しないために充電の時間を確保しやすいことなどの特徴からEV化には有利な条件を備えている。本研究では、首都圏内の特定の宅配エリアを想定して、GIS(地理情報システム)などを用いて、まずは宅配専用車の基本仕様を設計する。次に、現行の使用車をすべて上記の宅配専用車に代替した場合の二酸化炭素排出量やコスト削減などの定量的な影響評価を行う。

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環境志向の高い都市に対するEV導入社会システムの提案(堀江・田中・武市) anchor.png

EVを初期にリードすると考えられる潜在的な先進都市、あるいは今後、経済成長に従い抜本的な交通政策導入を要する各国都市に対し、社会意思決定の選択肢の一つとして、都市に合わせたEV普及提案を行うための基礎的研究を行う。



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Last-modified: 2018-01-08 (Mon) 01:24:00 (JST) (469d) by evinfo